イヌ科

リカオン

リカオン

リカオンの基本情報

リカオン

英名:African Wild Dog
学名:Lycaon pictus
分類:イヌ科 リカオン属
生息地:アンゴラ、ベナン、ボツワナ、ブルキナファソ、中央アフリカ共和国、チャド、エチオピア、ケニア、マラウィ、モザンビーク、ナミビア、ニジェール、セネガル、南アフリカ、南スーダン、スーダン、タンザニア、ザンビア、ジンバブエ
保全状況:EN〈絶滅危惧ⅠB類〉

リカオン@Photo credit: Andy MorffewPhoto credit: Andy Morffew

残忍な最強ハンター

リカオンは、肉食動物の中でも最強のハンターとして知られています。

狩りの成功率は時に90%にも昇ることがあり、これは成功率が高くても30%ほどである、同じく群れを作るライオンやブチハイエナと比べても、とんでもない高さです。

 

リカオンは、パックと呼ばれる群れを作り、パックで狩りを行います。

彼らは、通常、体重50㎏ほどの有蹄類の群れを襲います。

獲物の群れがパニックに陥る中、弱っている個体を見つけ出し、パック全員で咬みつき、ものの数分で倒してしまいます。

時に体重200㎏を超える大物を標的にすることもありますが、その場合はより長い時間をかけて捕まえます。

 

リカオンは、狩りをすぐ諦めるネコ科動物とは違い、しつこいハンターでもあります。

獲物を、数kmも追跡し弱ったところを襲うのです。

彼らは、最高時速66km、通常でも時速50㎞で長いこと走ることができます。

それが何匹にもなって襲ってくるのですから、獲物からしたらたまったものではありません。

 

リカオンは、よく残虐であると形容されます。

それは、彼らが時に獲物を生きたまま食べるからです。

ネコ科動物のように息の根を止めて食べるのではなく、獲物がもがいている間に新鮮な肉を食べます。

そのスピードも非常に速く、トムソンガゼル程度の大きさであれば15分で完食してしまいます。

恐ろしいです。

強い絆

狩りの時には残虐な一面を見せるリカオンですが、彼らは肉食動物の中でも非常に高い社会性を持つことでも知られています。

狩りの成功率が高いのも、この高い社会性、チームワークが関係しています。

 

社会を作るうえで大事なのが、コミュニケーションです。

リカオンは、鼻を突き合わせたりなめ合ったりして、互いに挨拶をします。

この他、音声や接触によるコミュニケーションは、彼らの絆をより強固なものにしています。

 

リカオンの社会は、同じく社会性の高いチンパンジーなどの霊長類と比べても非常に平和的です。

順位を争って闘争を繰り広げるチンパンジーなどとは異なり、パック内でのケンカはめったにありません。

また、子供やけがをした個体にエサを吐き戻したり、子供が真っ先に獲物を食べるのを許容したりと、弱者に対する寛容な姿勢も見られます。

 

狩りの様子だけを見れば、リカオンは獰猛で残虐な生き物だと思ってしまいますが、彼らの社会を覗いてみれば、彼らはどの動物よりも仲間思いであることが分かります。

ある一面だけを見て判断することの誤謬を、リカオンは指摘してくれているようです。

リカオン@Photo credit: TedPhoto credit: Ted

リカオンの生態

リカオンは、サハラ以南のアフリカのサバンナや、半砂漠非森林地帯などに、パッチ状に生息します。

かつてはサハラ以南のアフリカに広く分布していましたが、現在はガーナやガボンなどの国々で絶滅しており、さらにコンゴ民主共和国やナイジェリアなどの国々でも絶滅が示唆されています。

 

リカオンは純粋な肉食です。

インパラやダイカー、シマウマ、ヌーなどの有蹄類を主食とし、死肉を食べることはありません。

有蹄類の他には、ノウサギトカゲなどを食べることもありますが、全体に占める割合は小さいです。

また、ブチハイエナとは獲物をめぐって競合関係にあり、ブチハイエナが自分たちの獲物を求めて近づいてきた時には追い払います。

狩りには主に視覚が用いられます。

リカオンは50~100m先にいるなかまを識別できるようです。

 

体長は75~110㎝、肩高は60~80㎝、体重は18~36㎏、尾長は30~40㎝で、オスの方がメスよりもわずかに大きくなります

大きな耳は20㎝以上にもなり、体温調節機能としての役割も果たしています。

特徴的な模様は個体ごとに違い、「ペイントされたオオカミ」を意味する学名の由来にもなっています。

 

リカオンは昼行性で、10頭前後から成るパックとよばれる群れを作ります

メスよりもオスの方が多く、群れの頂点には1頭ずつのオスとメスが立ちます。

基本的にメスが生まれた群れから分散しますが、オスも一部は分散し、新たなパックを作ることもあります。

パックは、数千㎢にも及ぶ広い範囲を放浪します。

なわばり性は非常に弱く、イヌ科動物にみられる尿によるマーキングも見られません。

最優位のペアには尿によるにおいづけ行われますが、これは繁殖に関わるものだと考えられています。

 

繁殖には地域により季節性があります。

最優位のオスとメスのみが繁殖しますが、劣位のメスが繁殖する場合もあります。

その場合、優位メスとの闘争が生じ、時に子供が殺される場合もあります。

リカオンには、イヌ科動物によくみられる交尾結合がほとんど見られません。

見られたとしても約1分と短いものになります。

メスの出産間隔は12~14カ月で、妊娠期間は69~73日。

一度の出産で、約10頭もの赤ちゃんが産まれます。

これはイヌ科動物で最大です。

 

赤ちゃんは、ツチブタなどが残した巣で、パックのメンバーにより育てられます。

生後5週で離乳が始まり、10週齢には狩りについて行くようになります。

性成熟には生後12~18カ月で達しますが、実際の繁殖はまだ先のことになります。

メスは、2~2.5歳でパックを離れ、新たなパックに所属するようになります。

寿命は野生で約10年です。

リカオン@Photo credit: Benjamin HollisPhoto credit: Benjamin Hollis

リカオンに会える動物園

リカオンは、生息地の破壊、分断により個体数を減少させ続けています。

生息地の縮小、分断は、人間やイエイヌとの接触の機会を増やし、人間との摩擦、狂犬病や犬ジステンパーなどの感染症のリスクを増大します。

また、他のパックとの交流の機会を減らし、パック内の遺伝的多様性も減少させます。

このような事態を改善しようといくつかの保護区が設置されていますが、リカオンは非常に広い生息範囲を必要とする動物です。

彼らを保全しようにも、広さが十分でない保護区もあるようです。

このような事態が絡まり、現在、リカオンは絶滅危惧ⅠB類に指定されており、成熟個体数は1500頭以下と推測されています

 

そんなリカオンですが、なんと日本の動物園でも見ることができます

神奈川県のよこはま動物園ズーラシアと、静岡県の富士サファリパークがリカオンを飼育、展示しています。

おそらく、彼らの社会性を垣間見ることができるでしょう。

是非、足を運んでみてください。

リカオン@Photo credit: Kent WangPhoto credit: Kent Wang