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『ツキノワグマ すぐそこにいる野生動物』

ツキノワグマ すぐそこにいる野生動物
目次

書籍情報

書名:ツキノワグマ すぐそこにいる野生動物
著者:山﨑晃司(東京農業大学地域環境科学部教授)
発行年:2017年
出版社:東京大学出版会
価格:3,600円(+税)
ページ数:258ページ

■目次

第1章 ツキノワグマという動物    

第2章 森や人間の変化    

第3章 人間との衝突    

第4章 姿を消したツキノワグマ    

第5章 管理や保全のための試み    

第6章 これからどうつきあうか

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隣人・ツキノワグマ

現在、レッドリストにおいて、絶滅危惧Ⅱ類に指定されており、各地で個体数を減らし続けているツキノワグマですが、日本では例外的に分布域を拡大させています

絶滅危惧種であるツキノワグマが、その分布域を拡大させていることは、一見非常に喜ばしいことのように思えます。

しかし、本書を読むと、決してそうではないことが分かります。

ツキノワグマの分布域拡大に伴い発生する最大ともいえる問題が、人との関係に関する問題です。

彼らが分布域を拡大させれば、当然人間との軋轢が生まれます。

日本では、多い時には年間100人以上がツキノワグマに襲われ、死亡例が出ることもあります。

農業や家畜への被害も小さくなく、それゆえ人間に見つかれば捕殺されることも少なくありません。

しかし、果たしてそれはツキノワグマだけの問題なのでしょうか。

本書の冒頭では、まずツキノワグマが動物学的にどのような動物なのか紹介されます。

その後、日本においてツキノワグマがどのような状況にあるか、例えばなぜ急激に分布域を拡大し始めたのか、個体数はどの程度なのかということについて語られます。

この辺で、ツキノワグマに関する問題が、決して彼らのせいだけにされるものではないことが分かってきます。

そして第3章以降で、人間がツキノワグマによってどのような被害を受けているのか、その実態や、今後、人間とツキノワグマが共存していくためにはどのような管理、保全が必要なのかを中心に話が展開されていきます。

理想論を語ることに終始するのではなく、これまで何が行われてきて、今何が試されているか。

そして将来何をするべきかということが現実に即して語られているのが印象的です。

本書は、ツキノワグマという動物がどのような生き物なのかということよりかは、彼らと人間はどのように付き合っていけばよいのかということに主眼が置かれています。

ツキノワグマと人間が共存していくためには、行政による保護・管理だけでなく、一般市民の理解が必要です。

例えば、ある市に生息するツキノワグマを、保護・管理目的で他の市に移入させることは、市が合意しても地元民が拒否する可能性は大いにあります。

それは恐らく、ツキノワグマへのよくないイメージからでしょう。

本書は、筆者も言うように、「こうした状況の改善に少しでも貢献できることを目的に、一般の方向けの普及啓発書として書き下ろ」されたものです。

ところで、本州において勢力を拡大しているツキノワグマは、現在九州にいないとされています。

そして、四国では数十頭が残るのみとされています。

なぜ、これらの地域ではツキノワグマが少ないのかという謎について、本書では第4章で触れられます。

謎の解明には至らないものの、その推理の過程は非常に面白く、興味深いです。

人間よりもはるか昔に日本に入ってきたツキノワグマ。そして殺傷能力が高いという点で、日本に住む野生動物とは一線を画すツキノワグマ。

それゆえ彼らと人間との共存は難しいと思ってしまいますが、大事なのはまず彼らを理解し、現状を認識すること。

本書はこのことを切実に訴えかけてきます。

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