クマ科

ヒグマ

ヒグマ©2014 f.c.franklin: clipped from the original
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ヒグマの基本情報

ヒグマ

英名:Brown Bear
学名:Ursus arctos
分類:クマ科 クマ属
生息地:アフガニスタン、アルバニア、アルメニア、アゼルバイジャン、ベラルーシ、ボスニアヘルツェゴビナ、ブルガリア、カナダ、中国、クロアチア、エストニア、フィンランド、フランス、ジョージア、ギリシャ、インド、イラン、イラク、イタリア、日本、カザフスタン、韓国、キルギス、ラトビア、モンゴル、モンテネグロ、ネパール、北マケドニア、ノルウェー、パキスタン、ポーランド、ルーマニア、ロシア、セルビア、スロバキア、スロベニア、スペイン、スウェーデン、タジキスタン、トルコ、ウクライナ、アメリカ合衆国、ウズベキスタン、レバノン、シリア
保全状況:LC〈軽度懸念〉

ヒグマ@Photo credit: Christoph SträsslerPhoto credit: Christoph Strässler

雑食のクマ

肉食のホッキョクグマ、昆虫食のナマケグマ、草食のジャイアントパンダメガネグマ

クマ類にはさまざまなタイプの食性を持つものがいますが、ヒグマはこれらすべての食性を示す、雑食性のクマです

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ヒグマのエサメニューには、有蹄類をはじめとする動物性の食物、サケやマスなどの魚、アリやハチなどの昆虫やその幼虫、そして草本類や木本類の実など多種多様な食物が載り、その食性の幅は人間よりも広いと言われることもあります。

このようになんでも食べられる能力は、彼らを様々な環境に適応させました。

ヒグマは、ゴビ砂漠のような砂漠地帯から北極圏まで、多様な環境に生息します。

これも彼らの雑食性のおかげです。

現在ヒグマは、最も広い分布域を持つ肉食動物の1種で、クマ類の中では最大の版図を誇ります。

 

しかし、彼らの雑食の能力をもってしても、乗り越えられない時期があります。

それが冬です。

ただでさえ体温を保つのに他の季節よりも多くのエネルギーを要するのに、それに加えてエサが少なくなる冬は、ヒグマにとっては大敵です。

そこで、そんな冬を乗り越えるために、ヒグマはある戦略を発達させました。

 

ツキノワグマなど一部のクマにも見られる、冬ごもりです。

ヒグマは、エサが豊富な秋に飽食し、脂肪を蓄えます。

この時の体重は春に比べると2~4割も重くなります。

そして、冬になると早くて11月下旬から、主に自分で掘った穴にこもります。

この穴で飲まず食わず、排尿排泄をせずに冬を過ごし、早ければ3月中旬に目を覚まして再び活動を開始するのです。

 

ヒグマを含め、クマの冬ごもりにはいくつか特徴があります。

例えば、ヤマネなどの冬眠とは異なり、冬ごもり中のクマの体温は数度低下するにとどまります

また、クマは冬ごもり中でも、独特な生理機構により筋肉や骨の損失を最小限に抑えます

これにより、外界からの突然の刺激に、素早く反応することができます。

さらに、メスはこの冬ごもり中に出産をします。

そして、何も飲み食いしない冬ごもり中に、越冬穴で子供を育てます。

 

このように雑食という能力に加え、冬を乗り越える術とそれに合う生活を身につけたことで、ヒグマは様々な環境に適応し、分布域を広げることができたのです。

雑食がもたらしたもの

前述のように、雑食という食性は、ヒグマに多様な環境で適応する能力を与えました。

しかし、この雑食性のためにヒグマは自らの首を絞めることになる場合があります。

 

ヒグマは、人間が作ったメロンやスイカ、稲などの農作物や、ヒツジ、ウマなどの家畜さえそのエサメニューに載せてしまいます。

特に農作物は消化効率がいいものばかりで、さらに一度に大量に手に入れることができます。

また、集約的営農スタイルへの変化により、畑に人間が入る機会が少なくなっている中で、ヒグマが畑にアクセスしやすい状況ができています。

 

こういった条件のもとで、日本におけるヒグマによる農業被害は増加傾向にあり、年間被害総額は1億円を超えて推移しています。

最も被害が大きいものはトウモロコシで、全体の6割を占めます。

このように農作物を荒らせば、当然ながら人間との軋轢が生まれます。

残念ながら、農作物への被害などを理由に、北海道では年間数百頭、例えば2018年度には918頭のヒグマが捕殺されています。

彼らの適応力を向上させたはずの雑食という能力は、人間を前にしたときはむしろ、ヒグマに害をもたらしたのです。

 

しかし、こういったヒグマによる農作物への被害とヒグマの捕殺は、未然に防ぐことができるかもしれません。

例えば電気柵を設置したり、ヒグマが好まないダイコンやカボチャを森林に近接する所に植えたりというような対策は、すでにある程度の効果があることが分かっています。

また、ヒグマの生態がより詳しくわかれば、更なる対策が可能となるでしょう。

ヒグマの農作物利用は先天的なものではなく、学習によるものである可能性が示唆されています。

また、農作物の利用は木の実がなる前の8月9月に増加することや、堅果が凶作の年に増加することなどが分かっています。

これらのヒグマに関する知識の蓄積により、今後人との軋轢が緩和される可能性はあります。

 

特に北海道は、世界的に見ても農作物被害を通じたクマと人との軋轢が最も大きい地域です。

今後の北海道の動向は、クマだけでなく他の野生動物と人との共存を考える上でも、重要なものとなるでしょう。

エゾヒグマ@Photo credit: sfmine79エゾヒグマ@Photo credit: sfmine79

ヒグマの生態

生息地

ヒグマは、砂漠から北極圏まで多様な環境に生息します。

標高5,000mまでの森林地帯山地河岸草原などで暮らします。

ツキノワグマやアメリカクロクマよりも森林への依存が小さく、ツンドラなど開けた土地にも生息します。

生息地の一部では、ホッキョクグマアメリカクロクマツキノワグマと共存しています。

稀ではあるものの、飼育下でも野生下でもホッキョクグマとの交雑が確認されています。

日本には亜種のエゾヒグマが、北海道および国後島、択捉島に生息しています。

エゾヒグマはその遺伝的変異から、3度に分けて北海道に入ったとみられています。

ツキノワグマ©2013 Eric Kilby:clipped from the original
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食性

雑食性ですが、食物の約9割を植物質が占めます

しかし、クマの消化管は単純で、草食動物のように微生物を共生させることでセルロースを分解することができないので、消化率の高い植物を選んで大量に食べます

全期間を通じて、草本類とシカなど動物性の食物が食べられます。

初夏から晩秋にかけては、ヤマグワなど木本類の実を主に食べます。

この他、アリやハチなどの昆虫や、河川を遡上するサケ科の魚、ザリガニなどの甲殻類腐肉も食べます。

ヒグマでは共食いが見られます。

また、人を襲って食べることもあります。

草本類の利用は、高緯度に生息するヒグマほど少なくなる傾向にあります。

大人のヒグマに捕食者はいませんが、特に子供はオオカミピューマに襲われることが稀にあります。

ピューマ©2010 Mohd Fazlin Mohd Effendy Ooi: clipped from the orignial
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形態

体長は2~3m、肩高は90~150㎝、体重は100~600㎏、尾長は6~22㎝で、性的二型が顕著に見られます

前足の爪は5~8.5㎝、後足の爪は3~5㎝、陰茎骨は約15㎝、乳頭は胸に2対4つ、鼠径部に1対2つ。

年に2回換毛し、その毛色はクマの中で最も多様です

その毛色にちなみ、北米では特にグリズリーと呼ばれます。

最大亜種はアラスカ半島沿岸に生息するコディアックヒグマです。

コディアックヒグマ@Photo credit: Lisaコディアックヒグマ@Photo credit: Lisa

 

 

行動

ヒグマは昼夜問わず活動しますが、朝方と夕方に最も活発になります。

単独性ですが、なわばり性が非常に弱いため、いいエサ場などでは複数が集まることもあります。

行動圏は通常数十㎢~数百㎢ですが、特にオスの場合、1,000㎢を超えることもあります。

行動圏はオスの方が格段に大きく、性別問わず大幅な重複が見られます。

木登り、泳ぎともにできます。

特に泳ぎに関しては、ヒグマはオリンピック選手よりも速く泳ぐことができます。

また、10㎞以上泳ぐこともあるようです。

また、走りも早く短距離であれば馬に走り勝つこともできます。

ヒグマと言えばその力強さです。

牛を一発で倒すことができ、さらにそれを軽々と引きずることができるほど。

その体から繰り出される威嚇は迫力満点です。

この力強い威嚇行動は、ヒグマが樹上という避難場所がない草原に進出した際、オオカミなどの捕食者から子を守るために発達したと考えられています。

 

繁殖

ヒグマは5月~7月にかけて繁殖します。

交尾は数分から1時間に及び、複数の相手と行うこともあれば1頭としか行わないこともあります

妊娠期間は約8週ですが、約5カ月の着床遅延があるため、見かけ上は180~270日になります。

出産は1月~2月、越冬穴の中で行われます。

ちなみに、出産したメスは、冬ごもりを終える時期が遅れる傾向にあり、最長5月上旬まで穴から出てきません。

一度の出産で、体重わずか350~680gの赤ちゃんが通常1~3頭産まれます。

赤ちゃんは穴にいる数カ月間は栄養価の高い母乳だけを飲んで育ちます。

約2歳半まで母親と暮らし、特にオスは性成熟前に母親の行動圏から分散していきます

性成熟には4~5歳で達しますが、体は10歳ごろまで成長します。

ヒグマの子供が1年目で死ぬ確率は13~44%で、子殺しなどがその原因です。

寿命は野生で最長37年、飼育下では50年近く生きた例があります。

ヒグマ@Photo credit: ArendPhoto credit: Arend

ヒグマに会える動物園

ヒグマの個体数は全体で20万頭以上いると推測されており、絶滅はそれほど危惧されていません。

IUCNのレッドリストでも軽度懸念の評価です。

ヒグマが最も多く生息するのはロシアで約10万頭、次いでアメリカ合衆国の3万3千頭、カナダの2万5千頭、ロシア以外のヨーロッパ1万5千頭。

北海道には約1万頭前後いると言われていますが、正確なことは分かりません。

 

全体で見ると沢山いるヒグマですが、地域別にみると絶滅が懸念される個体群は少なくありません。

例えば、中国などに生息するヒグマの小型亜種、チベットヒグマ(ウマグマ)はかつての分布域の2%の土地にしかいません。

また、アジア最大の砂漠、ゴビ砂漠に生息する亜種ゴビヒグマや、イタリアのマルシカヒグマはそれぞれ30~40頭ほどしか生存しておらず、絶滅に極めて近い状況にあります。

 

今はまだいる個体群も、今後絶滅に近づいていくかもしれません。

ヒグマは、胆のう、熊掌、娯楽、駆除といった目的で、少なからず殺されています。

ヒグマは農作物だけでなく、人を襲うこともあるので、害獣としてのイメージが強く、こういった捕殺に関しては反対が少ないと思われます。

しかし、人を襲うことに関しては、例えば日本では1962年~2015年の間で起きた人身事故は123件と、必ずしも多くはありません。

また、ヒグマが人の居住地に赴き、積極的に襲うことはありませんし、クマは本来人の存在に敏感です。

誤ったイメージでヒグマは殺してもいい動物という認識が醸成されることだけは避けたいものです。

ヒグマ@Photo credit: NOAA Photo LibraryPhoto credit: NOAA Photo Library

 

そんなヒグマですが、日本では静岡県の富士サファリパークなどで会うことができます。

特にエゾヒグマにはパンダもいる和歌山県のアドベンチャーワールドで、ウマグマには三重県の大内山動物園、兵庫県の王子動物園で会うことができます。

日本最大の肉食動物、ヒグマ。彼らを知るきっかけとして、動物園に赴くのもいいかもしれません。

富士サファリパーク

アドベンチャーワールド

大内山動物園

王子動物園