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キンイロジャッカル

キンイロジャッカル©2019 Kandukuru Nagarjun
©2019 Kandukuru Nagarjun: clipped from the original
目次

キンイロジャッカルの基本情報

英名:Golden Jackal
学名:Canis aureus
分類:イヌ科 イヌ属
生息地:アフガニスタン、アルバニア、アルメニア、オーストリア、アゼルバイジャン、バングラデシュ、ブータン、ボスニアヘルツェゴビナ、ブルガリア、カンボジア、クロアチア、チェコ、ジョージア、ギリシャ、ハンガリー、インド、イラン、イラク、イスラエル、イタリア、ヨルダン、カザフスタン、ラオス、レバノン、モルドバ、モンテネグロ、ミャンマー、ネパール、北マケドニア、パキスタン、カタール、ルーマニア、ロシア、サウジアラビア、セルビア、スロバキア、スロベニア、スリランカ、シリア、タジキスタン、タイ、トルコ、トルクメニスタン、ウクライナ、ウズベキスタン、ベトナム
保全状況:LC〈軽度懸念〉

キンイロジャッカル@Photo credit: Soumyajit nandy
Photo credit: Soumyajit nandy

意外に深い人との関係

キンイロジャッカルと聞いて、その姿を思い浮かべられる人はどれくらいいるでしょう。

よっぽどの動物好きでない限り恐らくほとんどいないと思いますが、実はこのイヌ科動物、他の国では意外にも深く人と関わって来ていたのです。

例えば、エジプト神話に登場する冥界の神アヌビスの頭部は、ジャッカルを模していると言われています

最も、後述するようにアフリカのこのジャッカルはジャッカルではなかった可能性はあるのですが。

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また、キンイロジャッカルの分散の拠点とされているインドでは、世界最古の児童向け書籍『パンチャタントラ』などの民話に彼らが登場します

さらにヒンドゥー教の聖典で世界三大叙事詩の一つとされる『マハーバーラタ』では、友達のトラとオオカミ、マングース、ネズミを仲違いするように仕向け、エサのガゼルを独り占めするずる賢い動物として彼らが描かれています

キンイロジャッカルと人間との関わりは昔だけの話ではありません。

ロシアの航空会社であるアエロフロートは、シャライカ(交配を成功させたロシアの生物学者クリム・スリモフにちなんで、スリモフ犬とも呼ばれる)というイヌを探知犬として導入しています。

シャライカは、ラポニアンハーダーというイヌとキンイロジャッカルを掛け合わせて生まれた種で、鋭い嗅覚と小さく小回りの利く体を特徴としています。

ちなみに、キンイロジャッカルはオオカミやイエイヌとの遺伝的交流が過去にあり、今でも彼らと交配し、繁殖可能な子を産むことができます。

このように、日本ではほとんど知られていないキンイロジャッカルも、彼らの生息地では意外にも人間との関係があるのでした。

シャライカ(スリモフ犬)@Photo credit: RBTHvideo
シャライカ(スリモフ犬)@Photo credit: RBTHvideo
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キンイロジャッカルの生態

分類

2015年、アフリカのキンイロジャッカルだと思われていた種が、実はアフリカンゴールデンウルフという独立した種であることが遺伝子解析の結果分かりました。

そのため、現在キンイロジャッカルはアフリカには生息していません

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現在、ジャッカルと呼ばれる種は3種いますが(ゴールデンジャッカルセグロジャッカルヨコスジジャッカル)、遺伝子解析の結果、彼らは単系統ではない、つまり同じ祖先を持たないことが示されています

キンイロジャッカルは、他のジャッカルよりはコヨーテエチオピアオオカミとより近いことが分かっています。

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生息地

キンイロジャッカルは、東南アジアからヨーロッパの一部にかけて、乾燥した草原、森林、人の居住地の周辺などに生息します。

海抜2,000mまで見られ、ジャッカルの中では最北に生息し、生息範囲は最大です

ヨーロッパでは元々地中海沿岸に限って生息していましたが、19世紀に入ってスイスやポーランド、ドイツ、オランダなどこれまで見られなかった場所でも生息が確認されるようになりました。

この拡大には、競合関係にあるオオカミの減少が関係していると言われています。

また、インドではドールの存在が彼らの個体数を抑えている可能性があると言われています。

インドのキンイロジャッカルの遺伝的多様性は最も高く、そのため彼らの起源はインドにあると考えられています。

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食性

キンイロジャッカルは雑食性で、動物質のエサも植物質のエサも同じくらい食べます。

動物質のエサは、齧歯類鳥類爬虫類が多く、この他ウサギ類両生類死肉なども食べます。

狩りは1頭で行うことが最も多いですが、ペアで狩りをする場合は自分より5倍も大きな有蹄類を襲うこともあります。

また、ペアによる狩りは単独のものより成功率が約3倍になります。

植物質のエサは果実がほとんどです。キンイロジャッカルはヒツジやヤギといった家畜や、ブドウ、サトウキビ、ナッツ、メロンといった作物も食べるので、現地の人との間に軋轢が生まれる場合もあります。

競合関係にある種としては、オオカミの他、トラヒョウハイエナアカギツネが挙げられます。

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形態

体長はオスが71~85㎝、メスが64~73㎝、肩高は45~50㎝、体重はオスが6~14㎏、メスが7~11㎏、尾長は約25㎝になります。

体はオオカミの中で最小とされるアラビアオオカミ(20㎏)よりも小さいです。

毛色は地域と季節により変わり、春と秋には換毛します。

メラニズムは存在しますが、アルビノは2012年にイランでそれらしきものが撮影されたのが確認できるのみで、その存在は定かではありません。

キンイロジャッカル@Photo credit: tontantravel
Photo credit: tontantravel

行動

キンイロジャッカルは薄明薄暮性で、特に人が近くにいる場合は夜行性になります。

厳格なペア型の社会を形成し、ペアは一生を添い遂げます。

行動圏は20㎢までで、なわばりは約2~3㎢です。

なわばりはや巣の周りは、糞や尿でマーキングされます。

尿はイヌのようにオスは片足をあげて、メスは座ってします。

巣は自分で地面に掘ったり、他の動物が掘ったものを利用したりします。

繁殖

繁殖には地域によって季節性があります。

季節性がある場合では1~5月の間に行われることが多いようです。

交尾期は約1カ月で、交尾には交尾結合が見られます。

妊娠期間は約2カ月で、一度に1~9頭の赤ちゃんが産まれます。

赤ちゃんは母親だけでなく父親、そしてヘルパーと呼ばれる、性成熟後も群れに残った兄や姉により育てられます。

生後約10日で目が開き、耳が立ち始めます。

生後3週には親やヘルパーが吐き戻した食物を食べ始め、約8週で離乳します。

性成熟には約11カ月で達し、寿命は飼育下で約14~16年です。

キンイロジャッカル@Photo credit: zoofanatic
Photo credit: zoofanatic

人間とキンイロジャッカル

保全状況

毛皮やしっぽが売られたり、スポーツハンティングの対象となったりする場合が時にありますが、大きな脅威はないとされています

個体数は増加傾向にあり、絶滅に関するIUCNの評価は軽度懸念です。

ヨーロッパでは約7万頭、インドでは最低8万頭が生息していると推測されています。

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動物園

そんなキンイロジャッカルですが、残念ながら日本の動物園では見ることができません

彼らだけでなく、ジャッカルと名のつく動物は日本で見られないことも、日本人にとってジャッカルが馴染みのない動物である理由なのかもしれません。

最も、近年のラグビー人気により、“ジャッカル”という言葉自体は広まりつつありますが。

キンイロジャッカル@Photo credit: Kandukuru Nagarjun
Photo credit: Kandukuru Nagarjun
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