ネコ科

ヒョウ

ヒョウ©2013 flowcomm: clipped from the original

ヒョウの基本情報

ヒョウ

英名:Leopard
学名:Panthera pardus
分類:ネコ科 ヒョウ属
生息地:アフガニスタン、アンゴラ、アルメニア、アゼルバイジャン、バングラデシュ、ベナン、ブータン、ボツワナ、ブルキナファソ、ブルンジ、カンボジア、カメルーン、中央アフリカ共和国、チャド、中国、コンゴ共和国、コンゴ民主共和国、コートジボワール、ジブチ、エジプト、赤道ギニア、エリトリア、エスワティニ、エチオピア、ガボン、ガーナ、ギニア、ギニアビサウ、インド、インドネシア、イラン、イラク、ケニア、リベリア、マラウィ、マレーシア、マリ、モザンビーク、ミャンマー、ナミビア、ネパール、ニジェール、ナイジェリア、オマーン、パキスタン、ロシア、ルワンダ、サウジアラビア、セネガル、シエラレオネ、ソマリア、南アフリカ、南スーダン、スリランカ、スーダン、タンザニア、タイ、トルコ、トルクメニスタン、ウガンダ、イエメン、ザンビア、ジンバブエ
保全状況:VU〈絶滅危惧Ⅱ類〉

ヒョウ@Photo credit: Caroline GranycomPhoto credit: Caroline Granycom

最も繁栄しているネコ

ヒョウは、ネコ科の中で最も広い分布域を持っています。

分布域が広いということは、当然様々な環境に適応できるということ。

ヒョウは、気温でいえば₋30℃から50℃、標高でいえば海抜0mから5,000mの、温帯林、熱帯雨林、山地、サバンナ、砂漠など多様な環境で生き延びることができます。

隠れ場所やエサさえあれば、人の手が入ったプランテーションや農地、人間が多い環境にも生息します。

 

ヒョウのこのような適応力の源泉となるのが、エサの多様性です。

ヒョウのエサの種類はネコ科の中で最も多様で、彼らは200種類以上の脊椎動物をエサとしています。

主食はインパラやガゼルといった体重10~40㎏の有蹄類ですが、時に自分の体重の10倍もある獲物や、ゾウやキリンなど超大型草食動物の子供を捕食することもあります。

この他、コロブスやチンパンジー、ヒヒなどの霊長類や、ハイラックス、ノウサギ、齧歯類といった小型哺乳類、ヘビやワニなどの爬虫類鳥類魚類家畜死肉、時には人間さえも襲います。

また、ヒョウでは共食いも確認されています。

食性の多様性は、様々な環境に生息することを可能にするだけでなく、競合する動物たちがいる中での生存も可能にします。

つまり、比較的小さい獲物にシフトすることで、ライオントラブチハイエナリカオンなど、ヒョウと同じく中型の草食動物を主食とする肉食動物がいる中でも生きていくことができるのです。

ちなみに、ヒョウは捕らえた獲物を木の上に持っていくネコ科唯一の動物ですが、この習性もライオンなどの競争相手がいる環境の中で生存するための術として獲得されたと考えられます。

下の動画では、地面の獲物をリカオンから遠ざけるべく樹上に運ぶ様子を観察することができます。

ヒョウはこのような習性と、その多様な食性によりネコ科最大の版図を持つことができたのです。

繁栄を阻むもの

ネコ科の中で最も繁栄していると言っていいヒョウですが、その繁栄は今や過去のものになりつつあります。

かつての生息地からヒョウが次々と姿を消しているのです。

現在、ヒョウはアフリカのかつての生息地から少なくとも40%、アジアの50%以上で姿を消しています。

 

今のところ、ヒョウには9種の亜種が認められていますが、その多くが絶滅の危機に瀕しています。

スリランカに生息するセイロンヒョウは個体数900頭未満、中央アジアに生息するペルシャヒョウは個体数800~1,000頭と推測されており、IUCNのレッドリストでは絶滅危惧ⅠB類に指定されています。

さらに、ジャワ島のジャワヒョウは成熟個体250頭未満、中東のアラビアヒョウは200頭未満、ロシアのアムールヒョウは60頭未満とされており、絶滅危惧ⅠA類に指定されてしまっています。

アジアの残る2亜種、インドシナヒョウキタシナヒョウも絶滅の危機にあり、個体数はそれぞれ2,500頭未満、500頭未満と推測されています。

最も個体数が多い亜種はアフリカヒョウですが、彼らも今後絶滅の危機にさらされていくでしょう。

その訳は最後の章で説明します。

種全体としては、ヒョウは絶滅危惧Ⅱ類に指定されており、絶滅が懸念されている状態です。

 

繁栄していたはずのヒョウ、何が彼らを邪魔しているのでしょう。

一つは、人間による生息地の破壊、および農地への転換です。

特に熱帯雨林は人間活動により壊滅的な被害を受けています。

もう一つが密猟です。

特にアジアでは、毛皮、伝統薬となる体の一部を目的として違法な狩猟が行われています。

ヒョウの毛皮は価値が高く、また体の一部は伝統薬として使われたり、トラの代用品として利用されたりしています。

東南アジアではヒョウ1頭につき最高3,000米ドルが密猟者に支払われており、この価格は今後も上がり続けるだろうと言われています。

ヒョウが幾年もかけて培ってきた適応力も、人間の前ではなす術なし。

彼らの繁栄の灯は消えかけています。

ヒョウ@Photo credit: NTNU, Faculty of Natural SciencePhoto credit: NTNU, Faculty of Natural Science

ヒョウの生態

比較的短い肢と大きな頭骨を持つヒョウの体長は、オスが90~190㎝、メスが95~125㎝、肩高は55~82㎝、体重はオスが20~90㎏、メスが17~42㎏、尾長は50~100㎝で、性的二型が見られます

体格は環境により異なり、中東の山岳地帯のヒョウが最も小さく、アフリカ東部、南部および中央アジアのヒョウが最も大きくなります。

体格だけでなく、体色も環境によって変わります。

ロゼットと呼ばれる模様が特徴的なヒョウの体色は、乾燥地帯や温帯で薄く、植物が密生している場所や熱帯で濃くなります。

メラニズム個体(俗にクロヒョウ、ブラックパンサー)は珍しくなく、マレーシアとジャワ島の個体群で最も一般的です。

ブラックパンサー@Photo credit: Rute Martins of Leoa's PhotographyPhoto credit: Rute Martins of Leoa’s Photography

食性に関しては前述の通りで、ヒョウは平均で日に3㎏前後の肉を消費します。

狩りはゆっくり近づいて最高時速60kmの爆発力で襲うか、待ち伏せして襲うかで、基本的に1度の襲撃で終わることが多く、長く追跡することはありません

狩りには聴覚と視覚が主に使われ、狩りの成功率は5~38%です。

下の動画では、ヒョウの狩りを見ることができます。

獲物の鼻先を噛み、獲物を窒息させています。

ヒョウは人間を襲うこともあります。

特に人間とヒョウの距離が近いインドでは、125人以上を殺したとされるハドラプラヤグの人食いヒョウや、400人以上を殺したとされるパナールの人食いヒョウが知られています。

彼らはどちらもイギリス人ハンターのジム・コルベットにより殺されています。

ちなみに、ジム・コルベットはインドで最も古い国立公園(1936年設立)である、ジム・コルベット国立公園の名前に用いられています。

ヒョウは単独性で、狩りは主に夜間、明け方、夕暮れに行われます

オスもメスもなわばりを持ち、尿や糞、地面掘りなどでマーキングされます。

オスの行動圏はメスよりも大きく、複数のメスと重複しています。

オス同士の行動圏も重複していますが、遭遇すると激しいケンカになり、致命傷を負うこともあります。

行動圏は、タイの熱帯雨林でオスが約18㎢、メスが約9㎢、カラハリ砂漠ではオスが約2,300㎢、メスが約500㎢とばらつきがありますが、平均はオスが50~135㎢、メスが9~27㎢です。

ヒョウは一晩で20km以上歩くこともあります。

ジャンプ力は高く、垂直に3m、地面と平行に6mも跳ぶことができます。

 

繁殖は年中行われますが、エサが豊富な時期に出産が多く見られます。

メスの発情期は約7日で、乱交的な交尾が行われます。

また、この時期ヒョウはつがいで見られることが多くなり、つがいでエサを分け合う様子も観察されます。

妊娠期間は90~106日で、550g前後の赤ちゃんが通常1~3頭産まれます。

オスは交尾したメスの子には寛容で、一方メスはメスの血縁者の子供を引き取って育てることもあります。

赤ちゃんは、生後6~8週で巣穴から出るようになり、離乳が始まります。

生後3~4カ月で完全離乳し、12~18カ月で独立します。

オスの方がより生まれた場所から分散し、メスは母親の行動圏の一部を引き継ぐことが多いです。

性成熟にはオスもメスも24~28カ月で達しますが、実際の繁殖はオスで42~48カ月、メスで33~62カ月に行われます。

1歳までに約半分の赤ちゃんが死亡し、その子殺しやライオン、ブチハイエナによる捕食がその死因となっています。

一方、大人の死因には、同種およびトラ、ライオンなどとのなわばり争いや、イノシシ、リカオン、ヒヒの群れによる襲撃があります。

寿命は野生で10~17年、飼育下で21~23年ほどです。

ヒョウに会える動物園

ヒョウが比較的多く生息するアフリカにおいても、今後彼らは絶滅の危機にさらされていくかもしれません。

生息地の破壊はアフリカでも起きています。

1994年から2014年の間で、アフリカの人口は約7億人から11億人以上にまで増えました(人口成長率2.57%/年)。

それに伴い、同期間で農地は約6割増えました。

この傾向は今後も続くと考えられているため、ヒョウの生息地がさらに減少するとともに、ヒョウが家畜を襲うことからくる人間による迫害は増えていくことでしょう。

 

密猟も大きな懸念事項です。

ヒョウの毛皮や爪、牙などは現地民の儀式などに使われることが多く、そのためのヒョウの獲得は彼らの個体数に少なからず影響を及ぼします。

これに対し南アフリカは、人工の毛皮を代替品として使ってもらうため、繊維会社と提携しています。

 

密猟の中でも最も悪しきものが、スポーツハンティングです。

スポーツハンティングとは娯楽やトロフィー(殺した動物の一部を記念品としたもの)を目的として行われる狩猟のことです。

ヒョウは、ビッグファイブ(ライオン、ヒョウ、ゾウ、サイ、スイギュウ)と呼ばれる超大物のターゲットの1種で、これまで多くのハンターたちを魅了してきました。

その結果、多くのヒョウたちが人間の欲の毒牙にかかってしまいました。

ハンターの多くはアメリカ人で、2005年から2014年の10年間にアメリカに輸入されたヒョウのトロフィーは4,500頭にも昇ります。

このようなヒョウの繁栄を妨げる生息地の減少や密猟はヒョウだけでなく、ヒョウのエサにも影響します。

1970年から2005年の間で、アフリカの78保護区におけるヒョウの獲物の数は約60%も減少しています。

《参考画像》スイギュウとトロフィーハンター
スイギュウとトロフィーハンター

《参考資料:米国人による“趣味の狩猟”で大量の動物が犠牲に》

《参考資料:アフリカの自然保護区におけるスポーツハンティングと地域住民の生活実践に関する研究》

自然界では多くの脅威に直面するヒョウですが、福岡県の福岡市動物園や、愛媛県のとべ動物園など日本の動物園でも見ることができます。

また、メラニズム個体であるクロヒョウには静岡県の浜松市動物園で見ることができます。

さらに、野生での個体数が100頭をきっているアムールヒョウには、意外にも多くの動物園で会うことができます。

北海道の旭山動物園、埼玉県の東武動物公園、石川県のいしかわ動物園、兵庫県の王子動物園、広島県の安佐動物公園などがアムールヒョウを飼育・展示しています。

ところで、ヒョウに似た動物にジャガーやユキヒョウがいますが、ヒョウに最も近縁なのはライオンであることが分子研究により分かっています。

豆知識でした。

↑福岡市動物園

↑とべ動物園

↑浜松市動物園

↑旭山動物園

↑東武動物公園

↑いしかわ動物園

↑王子動物園

↑安佐動物公園