イヌ科

タテガミオオカミ

タテガミオオカミ

タテガミオオカミの基本情報

タテガミオオカミ

英名:Maned Wolf
学名:Chrysocyon brachyurus
分類:イヌ科 タテガミオオカミ属
生息地:アルゼンチン、ボリビア、ブラジル、パラグアイ
保全状況:NT〈準絶滅危惧〉
タテガミオオカミ

モデルドッグ

近年の遺伝子研究の発展により、イヌ科動物はオオカミ型系統南米系統アカギツネ系統シマハイイロギツネ系統の4つの系統に分けられることになりました。

タテガミオオカミはこのうち南米系統に属しています。

なので、“オオカミ”という言葉はついていても、進化系統的にはオオカミではありません

また、彼らは進化の過程で独自の道を歩いてきており、タテガミオオカミ属にはこのタテガミオオカミしか分類されていません。

 

そんなタテガミオオカミ、名前にもあるように(英名の“maned”も“たてがみのある”という意味)、興奮すると逆立つ黒いたてがみが特徴的ですが、それよりもスレンダーで長い脚に目が行ってしまいます

肩の高さは75㎝近くにもなり、その姿はまるでモデルのようです。

 

歩き方も独特です。

多くの動物は斜体歩(しゃたいほ)という歩き方をします。

これは、右前・左後、左前・左後をそれぞれ1組として、同時に地面に着いたり離れたりする歩き方です。

ところが、タテガミオオカミは右前・右後、左前・左後を1組として歩きます。

これは側体歩(そくたいほ)と呼ばれ、上下動が小さい歩き方です。

側体歩をする動物は珍しく、先天的にこの歩き方をするのは、他にキリンラクダゾウくらいです。

 

また、タテガミオオカミはイヌ科動物の中で最も速く走ると言われています

脚の長さを考えれば足が速いのもうなずけますが、実のところ、彼らはその特徴をある習性のために自然界で生かしきれていません

それは、少し走っては立ち止まり、あたりを見回すという習性です。

この習性のために人間に捕らえられることが少なくなく、天敵がいないにもかかわらず絶滅が懸念されています。

タテガミオオカミPhoto credit: Spencer WrightPhoto credit: Spencer Wright

タテガミオオカミの生態

タテガミオオカミは、南米東部の草原沼沢地低木林に生息します。

 

主に夜間に活動する彼らは、雑食性でアルマジロやネズミなどの哺乳類鳥類両生類昆虫などを食べます。

獲物を狙う際は、イヌ科動物にみられるように高くジャンプして、前肢で獲物を捕らえます。

ただ、キツネなどとは異なり、ジャンプの時背中は曲がらずまっすぐのままです(下の動画で見ることができます)。

果実もよく食べ、彼らの食物の半分を占めます

中でも「オオカミの果実」と呼ばれるロベイラは彼らの好物で、彼らしか食べません。

 

体長は95~132㎝、体重は20~26㎏、しっぽの長さは28~50㎝です。

彼らの特徴である大きな耳は17㎝にもなり、獲物の音を鋭く察知します

また、耳は立てたり(優位を示す)伏せたり(服従を示す)することで、コミュニケーションにも使われます。

足も特徴的で、真ん中2本の指、第3、第4の指球は癒合しており足裏を広げることができます。

足裏が広くなることで、安定して歩いたり走ったりすることができます。

 

タテガミオオカミは、長期的なペアを作ります。

しかし、ペアでいることは少なく、繁殖期くらいです。

普段はそれぞれが約30㎢の隣あう縄張りの中で過ごします。

縄張りは厳格で、糞尿でマーキングされます。

 

タテガミオオカミの繁殖には季節性が見られ、南部では4~6月に、北部では8~10月に交尾が行われます。

メスの妊娠期間は62~68日で、一度に通常2~3頭(最大7頭)の赤ちゃんが巣に産み落とされます。

飼育下の事例(えさの吐き戻し、毛づくろいなど)から、野生下でも育児にはオスも何らかの形で関与する可能性が示唆されています。

340~430gで産まれた赤ちゃんは、生後9日で目を開き、1カ月で耳が立ちます。

薄黒い体色は約2カ月で大人の色になり始め、生後約4カ月で離乳します。

性成熟には約1歳で達しますが、繁殖を始めるのはおよそ2歳になってからです。

寿命は飼育下で13~15年です。

タテガミオオカミに会える動物園

タテガミオオカミは、彼らの生存を脅かす様々な危機に直面しています。

生息地は破壊され、農地や牧草地に変えられていきます。

また、交通の発達により車に轢かれる可能性も高まっています。

タテガミオオカミは、しばしば家畜を襲い、サトウキビ畑などを荒らすので、駆除の対象となります。

さらにある地域では、彼らを薬として食べることもあるようです。

この時、彼らの走っては立ちどまるという習性は不利に働いているでしょう。

このような様々な脅威にさらされているタテガミオオカミは、レッドリストで準絶滅危惧に指定されており、成熟個体の数はおよそ17,000頭と推測されています

 

そんなタテガミオオカミですが、残念ながら日本では見ることができません

かつて東京の上野動物園で一頭飼育されていましたが、2020年5月に亡くなったようです。

すらりとしたタテガミオオカミの姿が、再び日本で見られるようになるといいですね。